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背徳の嗜好
第8章 ただ、見ているだけで…

 ―…チュッ…―

…と、コレが開始の合図かのように、湿った音が鼓膜を揺らす…

 「アッ…」

同時に、微かに漏れる吐息混じりの甘い声…

ソレは不意に、
後ろから彼が首筋に触れるか触れない程度のキスをしたからだった…

 「…ココは擽ったいですか?」

重低音の渋いバリトンボイスが耳元に囁かれる…

 「エッ…イ、イェ…」

歩子が蚊の鳴くような声で恥ずかしそうに応じると…

 ―…チュッ…―

 「アアッ…」

声色が少し高くなった…

 「…ココは弱いみたいですね…」

彼が耳にキスし、甘いマスクで微笑みかけている…

そのまま続けざまに…

 ―…カプッ…―

耳たぶが軽く甘噛みされ、彼の舌が躊躇なく、穴の入口にねっとり這入り込んでくると…

 「アッ…そ、そんな…ダ、ダメ…」

ゾワッと全身に鳥肌が勃った…

 「フフッ…感じやすい身体なんですね」

 「…そ、そんなこと…ただ…み、耳が…特に…敏感なだけで…」

 「…そうなんですか?…なら、コッチの感度はどうなんですか?」

イタズラな表情を浮かべながら、腰に回されていた彼の手が身体を撫でるように、
ゆっくりと這い上がっていったかと思うと…

 「…ンッ…ハァ~…」

目を薄め、口から深い吐息が漏れてくる…

彼の大きな手がバスローブの上からたわわな胸の膨らみを、
ヤワヤワと優しく丁寧に揉み始めていた…

 「…見た目通り、とても柔らかくて触り心地の良いオッパイですね」

 「…」

褒められ、歩子が顔を赤らめる…

 「アレ…?歩子さん…コレって、もしかして…
もうすでに硬くなってるんじゃ…?」

 「エッ…」

彼に指摘され、視線の先を良く見てみると…
膨らみの頂点が僅かにポチッと浮き勃っているようだった…

 「ほら…ココの処が…」

そう言って、その小高く隆起した押しボタンの様なモノが
彼の指先によって、コリコリと引っ掻くように弄ばれると…

 「アアッ…」

思わず、声のボリュームが大きくなる…

 「フフッ…やはり、耳よりもコチラの方が、遥かに反応がイイようですけど…」

 「…だ、だって…ソ、ソコは…」

いじらしく彼の腕の中で身を竦める歩子…

彼は一つ一つ順に妻の性感帯を探し当てながら、その反応を愉しんでいるのだろう…

そんな二人の睦まじい前戯を、私は固唾を飲んで見守っていた…
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