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ソレは、二十歳になってか……ら……?
第4章 約束(後日談)
「全然自覚が無いのが、困りものなんだけど……アイツ、今の仕事やる前から……学生ん時から、そんなとこ有ったのよね」
「え?」
「人に、妙に好かれるでしょ?初めて会った人にも警戒させないって言うか……すぐ仲良くなっちゃうし。馴れ馴れしいとか図々しいとか思われそうなのに、嫌われる事って、ほとんど無いのよ。巧だって……アナタのお兄さんだって、なんだかんだ言いながら、嫌ってないわよね、光のこと」
「はい。」
お兄ちゃん、いっつも光に文句は言うけど、結局は言うことを聞いてくれちゃってたりする。卒業式に出させてくれたり、一緒に住むのを認めてくれたり、実家に上手く言っててくれたり……意地悪なのは、顔だけかも。
「光のヤツのそういう部分だけが突出して、人前に曝されて無理矢理磨き上げられちゃったようなのが、ヒカリってワケ。」
「……はい……」
「ボーカルは、言わばバンドの『顔』よ。バックにメンバーは居ても、結局は一人で何百人とか何千人とか何万人を向こうに回して、魅了しなけりゃいけない存在なの。そんなヤツが、ステージで出してる様な自分を一人に全部向けちゃったら、どうなると思う?……逆らえないのは、当前よ」
ステージですごい数の人たちに向けているものを、一人に…………私に。
急に、背中が、ぞくんとした。
「ワタシなんかでああなら、アナタを前にして酒飲んだりしたら……普段がんばって閉めてる蓋も、はめてるタガも、一気にみーんな吹っ飛んだでしょうね」
話が一段落ついたからか、橋本さんはカップを取って、冷めかけているお茶を飲んだ。
「私で、大丈夫でしょうか……」
「ん?」
「もしもの時のために、避妊薬を飲むことにしようかとも思うんですけど……もしまたああなったら、逆らえないって言うか……言いなりになってしまいたい自分も居て、そんな私がヒカリさんの側に居ても、大丈夫かなって」
間を隔てる物なんて何も無しで、中にたくさん注いで貰いたい。
この人の種を身籠もって、産み落としたい。
あんな動物的な衝動が自分の中に有るなんて、考えてみたことも無かった。