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独り暮らし女性連続失踪事件
第2章 罠
しかし、本当は大丈夫どころではなかった。誠はロッカールームに駆け込むと、絵美に電話で知らせた。
「先生、大変だよ。あいつらが僕のところに来たんだよ」
「えっ、大沢君のとこまでやって来たの?乱暴されなかった?」
「大丈夫だよ」
「そう、よかった。でも、気をつけてよ、あいつらとんでもない人たちだから」
「うん、気をつける。先生の方は大丈夫?」
「私は大丈夫。だけど、また来るかも知れないから、気をつけてよ」
「うん、分った。じゃあ、またね」
電話を終えた絵美は顔が青くなっていた。実は彼女も脅されていた。
その日、絵美は吉田ケンネルの獣医、加藤の立ち会いの下、目つきの鋭いスーツの男、吉野とトラブル解決の話し合いを行っていた。
「この間も言ったように、五百万円で手打ちだ。即金で払ってくれたら、それで解決だよ」
「吉野さん、この間もお話ししたように、あれば事故です。わざとじゃありません。それに、五百万円なんて、とても払えません」
「バカも休み休みにしなよ。遊びで言ってるんじゃないよ。今日が期限と言った筈だ。どうなっても知らないよ」
「そんなこと言われても、事故だから」
「飯田さんよ、そんなこと言ってると、とんでもないことになるよ」
吉野がドスの利いた声で脅しをかけてきたが、「まあ、吉野さん、今日のところはこれくらいで。飯田さんも事故、事故と言わないで、考えて下さい」と、話し合いは加藤の取りなしでなんとか収まっていた。
しかし、誠の電話を聞いて、絵美は吉野が帰り際に言った「どうなっても知らねえぞ」、その言葉が気になっていた。