この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
独り暮らし女性連続失踪事件
第3章 捜索
「ああ、これか。『トラブル』は犬の交配のこと、確かな血統を得ようとすれば、金が絡むからな」
「どう思います?」
コーヒーを一口飲んだ田村は「埼玉の『愛犬家連続殺人事件』、覚えているか?」と逆に問い掛けた。
「はい、あのブリーダーのトラブルが殺人にまで発展した事件ですね」
「そうだ、あれだ」
佐々木はコーヒーを飲みながら机のパソコンでその事件を調べ出した。
「平成五年、埼玉県で発生した連続殺人事件。ブリーダーとしては有名だったが、ペットショップの経営に行き詰まり、詐欺的な商売を繰り返し、トラブルが絶えなかった。そのトラブルとなった顧客四人を犬の殺処分薬を使用して毒殺……いやな事件でしたね」
田村もコーヒーカップを手に黙って頷いていた。
「単なるトラブルでは行方不明にはならない。連れ去るにはそれだけの理由がある。トラブルは仕組まれたもの、違いますか?」
「しかし、これだけじゃ、飛躍過ぎだけどな」
「この先生が二人組に追い回されていたのをコンビニの店員が見ていたようです」
「なんだ、もう調べていたのか。それじゃあ、これを読んでみろよ」
田村は“お前も嗅覚が出て来たな”とでも言いたげな表情で、机の上にあるメモを佐々木に渡した。