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独り暮らし女性連続失踪事件
第3章 捜索
≪忌まわしい時間≫

牧場の朝は早い。朝靄が立ち込める中、午前5時には起こされる。

「ほらほら、いくら泣いてたって、ここから出て行けないんだよ。
働いて借金返さなくちゃ」

毎日、犬や牛の世話、週末は「アルバイト」と称する、口にするのも忌まわしい使役、自らの体を使った犬の精液採取が待っている。

「お前はもう飯田絵美じゃないの。ここではサリーよ。分ったわね?」
絵美はここに連れて来られた夜、聡子から言われた。

「サリー、土曜日の準備をするから、朝飯の後は七番の小屋に行け」
朝の牛舎掃除の最中に見回りの男から言われた。
七番と八番の小屋は隣の犬の訓練場内に建てられている。

「マリー、サリー、ぼやぼやすんじゃないのよ」
直ぐに迎えが来た。聡子だった。そして、隣の女も一緒だった。ここではマリーと呼ばれているらしい。

小屋に入ると、手前にテーブルと椅子が、奥は大きな透明なアクリルガラスで二つに仕切られていた。右の部屋にはクリーム色のきれいな毛並みをした中型の犬が、左には茶色のコリーが共に男性飼育員に伴われていた。

「サリー、お前の相手は右のジミーだ。彼は大切なレトリーバーで、血統を守らなくてはいけない。だから、やたらと交尾させられないのでまだ童貞だ。一歳、人間で言えば十七歳、やりたい盛りだよ。土曜日にジミーの相手をすることになっている」
「な、何を言っているんですか。犬となんかできる訳ないでしょう!」
「バカ野郎、まだそんなことを言っているのか!ここじゃ、外のように自由は無いんだ。言われた通りするんだ」

獣医の山本が竹刀を振りかざしたが、「山本さん、ごめんなさい。よく言って聞かせますから」とマリーがとりなしてくれた。

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