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独り暮らし女性連続失踪事件
第3章 捜索
二人が顔を曇らせているところに、同じパートの工藤(くどう)利子(としこ)が寄ってきた。
「祥子さん、どうかしたの?」
「ああ、利子さん。いや、あの、この子、大沢君の同級生。彼、学校でも変なんだって」
「あの佐藤賢一です。大沢とは一年生の時から同じクラスです。明るくて、いい奴ですが、春休みが終わったら、全く別人で、一言も話をしなくなって、どうしちゃったのか心配で」
賢一が自己紹介方々、事情を簡単に説明すると、利子も「そうなの…」と言ったきり黙ってしまった。
「利子さん、何か気にかかることでもあるの?」
「うん、祥子さんも、佐藤君?」
「はい、佐藤です」
「二人とも気を悪くしないで欲しいんだけど、大沢君、そんなにいい子だとは思えないのよ」
「だって、ここにいた時は礼儀正しくて、みんなに可愛がられていたじゃないの」
「確かにあの時はいい子だった。でも、それはあの日までのこと。今はそうじゃない」
利子の「今はそうじゃない」という言葉には、賢一や祥子が言っている「話しをしない」、「明るさがなくなった」という誠を心配する気持ちとは違って、穢らわしいものでも吐き捨てるような感情が含まれていた。
祥子は何故そんなに感情的になるのかしっくりせず、「利子さん、何があったのよ?お願いだから、話してよ」と聞き返すと、利子は「うん」と頷いたものの、「でも、ここじゃあ…」と人目を気にしていた。
思っている以上に、事情がある。祥子は「休憩室でも行きましょうか」と利子と賢一を連れて〝従業員専用〟と書かれたドアを開けて、店の奥に入って行った。
休憩時間になると、一杯になる休憩室だが、今は午前十時半、誰もいない。祥子は部屋のドアに鍵を掛けると、「さあ、話して」と利子に促した。