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独り暮らし女性連続失踪事件
第4章 救出への動き
「どうしたんだ?何でもないなら、名前と学校名は言えるだろう」と追い込まれた誠は咄嗟に、「大沢誠、い、いとこなんです」と答えた。
「いとこ?誰とだね?」
「あ、あの、哲也さんとです」
苦し紛れに嘘をついたが、哲也はそれを逃さない。
「そうなんだよ」とタバコを投げ捨てると、「誠と俺はいとこなんだよ」と合わせてきた。
警察官は誠と哲也の顔をしばらく見比べていたが、「安田、お前にこんな真面目ないとこがいるとは信じられない。いい加減なことを言うな」と叱りつけた。だが、哲也は根っからの悪党。「酷いな、片山さん。俺にだって一人くらいは出来のいいいとこがいるんですよ、片山さん」と誠と肩を組み、愛想笑いを浮かべる。
警察官はそれを全面的に信じた訳ではなかったが、恐喝している様子もないことから、警察手帳に「『大沢誠』と名乗る高校生と一緒」と書き加えると、「安田、あんまり遅くまで連れ回すんじゃないぞ」と哲也には釘を刺し、誠には「早く帰りなさい」と諭しただけで、行ってしまった。
警察官の背中を目で追っていた哲也は、彼が角を曲がったのを確かめると、「ははは、やれば出来るじゃないか!」と誠の頬をパンパンと叩いた。
本当に嫌な奴だと誠は思ったが、そんなことは顔に出せない。
その代りに「痛いですよ」と顔をしかめたが、「こんなのが痛いのか?ははは、だから、お前はダメなんだよ」と、またも、パンパンと頬を叩く。
もういい加減にして欲しいと思ったところに、もっと嫌な相手が現れた。聡子だ。グレーのスカートにグリーンのカーディガンを羽織って、交差点の向こうから手を振っている。
気がついた哲也が「大沢、お待ちかねだぞ」と聡子を指差し、ニヤニヤと笑った。