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独り暮らし女性連続失踪事件
第5章 潜入取材

「あの、血統のことを聞いてもいいですか?」
「どんなことだ、言ってみろよ」
「よい血統の犬を作る時ですが、馬は自然交配、牛は人工授精だって聞いたんですが、犬はどうしているんですか?」
「犬は馬と同じだよ。お前、変なことに詳しいな。しかし、犬の人工授精ってなんだよ?誰が犬のチンチンから搾るんだよ?そんなの想像しただけで笑っちゃうよな、はは、ははは」
「やっぱり、笑っちゃいますね。はは、ははは」

男は腹を抱えて笑い転げ、佐々木もそれに合わせて作り笑いをしていた。

「でも、そんな噂を聞いたんですよ。手で搾るかどうかは分りませんが、人工授精しているって」
「俺、そんな話、聞いたことねえぞ」

笑い過ぎて涙が出たのか、男は目を擦りながら答えた。しかし、それまで黙って佐々木たちの話を聞いていた責任者らしき男が「おい、孝治、いつまで遊んでいるんだ。仕事に戻れ」と、突然、割り込んできた。

「あんた、くだらねえ話は止めて、ここから出ていってくれ」

先程までの和やかな空気は一変し、取りつく島もない。佐々木は直ぐに追い出されてしまった。

他の施設でも同じだった。一般的な話は詳しく教えてくれるが、人工授精のことを持ち出すと、突然ストップがかかる。

表面上は問題無しだが、人工授精のことにひどく神経質、何か隠している、佐々木はそう感じていた。

「おい、あいつか?」
「そうです」
「見かけねえ奴だな」
「ええ、どう見てもペットショップに勤めているとは思えません」
「分った。後は俺たちに任せろ」

柱の影から監視されていることに佐々木は気がついていない。
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