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独り暮らし女性連続失踪事件
第5章 潜入取材
「あ、いや、暴力はいけません…」
口の中が切れたのだろう。血が溜まって上手く喋れなくなった。
「この野郎、舐めやがって」
もう一発くるかと身構えたところ、「三郎、もう止めておけ」と先程の男の声がした。
「はあ、でも」
「なあに、殴らなくたって、あそこに連れて行けば直ぐに吐くから」
「あ、そうですね。あははは」
佐々木は袋で目隠しをされているから、何を笑っているのか分からなかったが、嫌な雰囲気だった。
そして、車が走り出して五分もしないうちに、「着いたぜ。降りろ」と車から引きづり出された。足を着けると、コンクリートではなく、草地だった。
「おい、こっちだ」と腕を掴まれ、足元が木の床のようなところに連れて行かれた。
「もういいだろう」と声がかかり、袋を取られると、そこは車庫のような物置のような小屋だった。そして、正面にスーツ姿の目つきの鋭い男が座っていた。
「犬のお勉強かね?」
低いが太い声は他の男たちにはない迫力がある。
吉野?こいつか…田村編集長から渡されて資料にあったのはサングラスを掛けた横顔の写真だったが、右の口端が上がっているところは特徴がぴったり一致する。いろいろなトラブルに影がちらつく吉野グループのボス、吉野明に間違いない。
「おや、私のことを知っているのかな?」
僅かな表情の変化も見逃さない。そして、立ち上がると、「吉田ケンネルの者じゃないな。誰だ?」と言いながら近づいてきた。