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独り暮らし女性連続失踪事件
第2章 罠
「姉さん、困るよ。こんなことされちゃ」
「す、すみません。で、でも私の力じゃ、止められないので、そちらも綱を引いて下さい」
「こっちも引いているけれど、おたくの犬がウチのメリーを追い掛け回すから、あああ、やっちまったよ」
人間の諍いをよそに、部屋に刺しこむ春の日差しを浴びながら、二匹の犬の交尾が始まってしまった。
「どうしてくれるんだよ。メリーは処女だぜ」
「だって、犬の力が強いから」
「バカ野郎!ふざけんなよ。血統な確かな犬を作るために待っているのに、あんたが勝手にここに入って来るからだろう」
「飯田さん、リードをしっかり持ってないとだめですよ。ああ、どうしよう」
続いて部屋に飛び込んできた獣医の加藤も天を仰いでしまった。
「加藤先生、俺がボスに叱られるよ。どうすんだよ」
「吉野さんには私から事情を説明しますから、他の人もいるんで、大きな声は控えて下さい」
「加藤先生、頼むよ。しかし、お前、どうすんだよ!大変なことになっちまったよ。俺は知らねえよ」
おとなしいサニーがどうして急に興奮してこんなことになってしまったのか、絵美には信じられなかった。と、同時に厄介なことになってしまったと顔色はみるみるうちに青ざめていった。