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独り暮らし女性連続失踪事件
第6章 奪還
「そ、そんなことがあったのか」
誠は首を振って話を続けた。
「それだけじゃないんです。その後、先生は何処かに連れて行かれちゃったし、僕は今でも脅かされているんです」
誰かに喋ったら命がないと言われたこと、毎週、男に呼び出されて同じように脅かされ、女と無理やりセックスをさせられていることを誠は打ち明けた。
「今日は背中に入れ墨をするって、ビルに連れて込まれそうになったから、必死に逃げたんです。そしてたら…うっ、うう…」
涙が次から次へと溢れてきた。
「もう大丈夫だよ。みんな、お前を守ろうとしているんだ」
誠は小さく頷き、ボスが「吉野」、見張りが「哲也」、女が「聡子」と「芳子」、拉致された時は「加藤」と言う獣医も居たことも打ち明けた。
何でも相談に乗るとは言ったが、こんなに酷いこととは…根本は言葉が出なかった。長い教員生活の中でもこんな恐ろしく、ひどい事件は経験したことがなかった。
「大沢君、心配しなくていいよ。私たちの役目は君を守ることだよ。
怖かっただろう。よく話してくれたね」
横田副署長は誠の目を見て、キッパリと言った。困った時、助けが欲しい時、優しい笑顔に気持ちを癒されることもあるが、強い決意を表す厳しい顔が必要な時もある。今は後者だ。
「大沢、安心しろ。警察がお前を守ってくれるぞ。横田先輩、大沢を、飯田さんを救って下さい」
「大沢君、僕は根本先生と同じ大学の柔道部で先輩・後輩の間柄なんだよ。今日、君が勇気を持って話をしてくれた。もう私たちに安心して任せて下さい」
横田副署長の顔はいつの間にか優しいものに変わっていた。
「根本、俺たちは直ぐに署に戻り、捜査を開始する」
「よろしくお願いします。朝まで私が付き添います」
ようやく恐怖から解放された誠はいつの間にか眠っていた。