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午睡の館 ~禁断の箱庭~
第1章 前編

すれ違った生徒達が「そうだよ、センセイ頑張れ!」と茶化してくる。

櫻子のぱっつりと切りそろえられた前髪から除く眉間が、ほんの少しだけ寄せられる。

「……です……」

「……え?」

ぽそりと零されたその呟きを、渡邉が聞き返した時、予鈴の鐘がガランゴロンと鳴った。

周りの生徒達が早足に移動教室へと行ってしまい、後には二人だけが残った。

しんと静まり返る廊下。

目の前の櫻子は持っていた教科書類を抱え直すと、今度ははっきりと口を開く。

「大切なものを増やして、失うのが怖いんです……」

「それは……一体どういう……?」

そう聞き返した渡邉を見上げてくる櫻子の瞳は、何か他を圧倒する力があり、渡邉はその後を続けられるない。

「失礼します」

櫻子はゆっくりお辞儀をすると、長い髪を揺らして渡邉の横を通り行ってしまった。





五月。

結局、四月の終わりに行われた新入生ピクニックに櫻子が来ることは無かった。

クラスの子達はがっかりしていたが、中等部から持ち上がりの生徒が大多数を占める為、皆わきまえているようだった。

「はあ……」

渡邉のよく日に焼けた顔が困惑し、小さく溜め息をついたのを聞きつけ、学年主任の田所が声を掛けてきた。

「どうしたんだい? 渡邉先生、溜め息なんてついちゃって、元気な君らしくない」

田所は空いていた隣の教員の席に腰を下ろした。

手元に置かれた東儀櫻子の内申書と成績表を見つけた田所は、「ああ、東儀か……」と合点がいったようだ。

「とても優秀な生徒なんです。ただ、どうしても友人を作ろうとしないんです……」

友達を作らないからと言って、櫻子がいじめにあっているかというと、そんなことは断じてなかった。

むしろそれより、櫻子は全生徒、全教員からまるで聖母の様に崇拝されているきらいがある。

「東儀はトクベツ……ですからねえ。中等部の教員に聞いたことがある。中等部二年までは普通の綺麗な生徒だったようですよ、もちろん友達もいてね」

「中等部二年ですか……」

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