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午睡の館 ~禁断の箱庭~
第1章 前編

「……お話のお邪魔ではありませんか……?」

そう遠慮がちに渡邉に聞いてきた櫻子に、渡邉は笑顔を見せて首を振る。

「東儀のいれたお茶を頂けるなんて、光栄だよ」

櫻子は少し頬を染めて俯くと、静かにお茶の準備をする。 

紺色のシャツワンピースを着た櫻子は、色白なのにさらに透明感を増して見えた。

おもわず見惚れそうになった渡邉が櫻子から視線を外して雅弥を見ると、冷静な瞳でこちらを見つめている雅弥と目が合った。

(……え……?)

しかしすぐにその瞳は櫻子に注がれ、優しいものへと変化をする。

「どうぞ、先生。ファーストフラッシュです。お口に合うといいのですが……」

櫻子は二十グラム数千円もする高級茶をこともなげに出す。

(いえいえ、こちらこそ、この紅茶様に合いますかどうか……)

渡邉は心の中でそう謙遜して、一口飲む。

一度も口にしたことが無かったファーストフラッシュは、春積みならではの瑞々しい香りと、優雅な甘みでとても美味しかった。

「とっても美味しいよ。ありがとう東儀」

微笑んでそう言った渡邉の言葉に、櫻子は照れたように俯くが、その口元は口角が上がっていた。

「……私には少し蒸らしが足りないな」 

二人に割って入る様に雅弥がそう言う。

「ご、ごめんなさいお兄様。今……淹れなおして……」

ぱっと顔を上げてそう謝る櫻子に、雅弥はふと微笑む。

「いいよ。これはこれで美味しいし……でも」

雅弥はそう言うと言葉を切り、隣に座った櫻子の腰を引き寄せる。

そしてその白く細い首筋にチュッとキスを落とすと、顔を上げる。

「お仕置きだ」

笑いながらそう言う雅弥に、櫻子は首を掌で抑えて真っ赤になった。

白いうなじは注意深く見ると分かるくらい、薄く鬱血していた。

渡邉は何故か嫌な気持ちになり、首筋から視線を外す。

その様子を、雅弥は面白そうに見つめていた。



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