この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
月曜日の秘めごと
第2章 雨と傘
雄志が差し出したのは、僕が渡した黒い折り畳み傘だ。それには僕もびっくりだ。
人から借りた傘を、見ず知らずの女の人に渡すとは。でもまあ雄志のことだから、この人をほっとけないだけなのかもしれないけれど。
言ってからあ……と思ったのか、慌てて付け加える。
「あー……俺のじゃないんすけど。こっちのなんで、そのままこっちに返してもらえたら……」
「こっちじゃなくて、蛍。須崎蛍(すざきほたる)」
僕もつい、自分の名を名乗っていた。
彼女の目が僕に向く。
大きな二重の黒目。やや堀の深いはっきりとした顔立ちの美人だった。色白の肌に長い黒髪が張りつき、そのせいか妙に艶っぽく見えてしまいドギマギした。
視線を下に向けようとするも、濡れた下着を思い出しはっとする。
「借りていいの?」
問いかけられ、僕は小さく頷いた。それだけの反応で精一杯だった。
じっと見られる。迷っているようだったけれど、やがて口元が笑みの形につり上がった。
「ありがとう」
「……はい」
雄志から傘を受けとり、雄志と僕を交互に見て言った。
「ここに返しにくればいい?」
「あ……はい」
頷く僕。