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月曜日の秘めごと
第2章 雨と傘

 雄志が差し出したのは、僕が渡した黒い折り畳み傘だ。それには僕もびっくりだ。
 人から借りた傘を、見ず知らずの女の人に渡すとは。でもまあ雄志のことだから、この人をほっとけないだけなのかもしれないけれど。
 言ってからあ……と思ったのか、慌てて付け加える。
「あー……俺のじゃないんすけど。こっちのなんで、そのままこっちに返してもらえたら……」
「こっちじゃなくて、蛍。須崎蛍(すざきほたる)」
 僕もつい、自分の名を名乗っていた。
 彼女の目が僕に向く。
 大きな二重の黒目。やや堀の深いはっきりとした顔立ちの美人だった。色白の肌に長い黒髪が張りつき、そのせいか妙に艶っぽく見えてしまいドギマギした。
 視線を下に向けようとするも、濡れた下着を思い出しはっとする。
「借りていいの?」
 問いかけられ、僕は小さく頷いた。それだけの反応で精一杯だった。
 じっと見られる。迷っているようだったけれど、やがて口元が笑みの形につり上がった。
「ありがとう」
「……はい」
 雄志から傘を受けとり、雄志と僕を交互に見て言った。
「ここに返しにくればいい?」
「あ……はい」
 頷く僕。
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