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月曜日の秘めごと
第3章 パンケーキとレモネード
三十分なんていらなかった。髪を軽く整え、着替えて出るだけ。普段自転車で五分ちょっとの距離だが、歩いていくことにした。それでも十五分で着いた。
漫画を立ち読みしながら待っていると、赤い車が目の前に止まった。顔をあげる。
ガラスを二枚挟み、お姉さんが僕を見ていた。おいで、とでも言わんばかりに、彼女はにっこりと微笑む。
僕の心臓がまた、大きく跳ねた。
「こんにちは。……失礼します」
「どうぞ」
近くで見て、赤い車はデミオだとわかった。車内にはあまり飾りがない。黒いハンドルカバーと、芳香剤の香りだけ。
お姉さんは今日も白いブラウス姿だ。この前よりも胸が開けたデザインな気がした。そして下は黒のスキニー。
僕はこの前の、透けた胸元を思い出した。
「お姉さんて、車持ってたんですね」
「あるわよ車くらい。都会じゃあるまいし、ないと不便だもの」
「そう、ですよね」
気分を害してしまっただろうか。この町では、一人一台車を持っているのは普通だ。僕もお金を貯めて、就活が始まるまでに免許を取るつもりでいる。