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獣に還る時
第1章 獣に還る時
 過去、妻を相手にそそり立っていた男根も、現在は項垂れた蔓。包皮の浅黒さは使い古したことを表す勲章。ピストンして、擦ってを繰り返してきた結果だが、コレも今ではなかなかに醜い。チェリーボーイだった頃の自分が懐かしかった。


 夫は指先で筋裏を撫でつつ、風呂から上がった。

 
 久しぶりに性器を弄ぶと妙に気持ちよくて、気づくと半勃起していた。酔っているせいもあるのだろう。体を拭くとき、ぐらぐらと揺れる陰茎が面白かった。下腹部に力を入れると、亀頭が挨拶をするかのようにグイッと上を向いた。


「よう暴れん坊」


 夫はそう言って、息子の頭を指先で弾いてやった。


「チャ~リララ~♪ リララ~♪」


 即興の鼻歌を奏でながら、パンツ一丁の姿で冷蔵庫を開けた。そしてビールを取りだして、プシュッ! と音を鳴らした次の瞬間だった。


 家の外で、滝のような轟音が轟いた。雨が降ってきたのだ。今年の夏は天候が不安定で、一度雨が降るとなると、このような豪雨に見舞われることが多い。


「……よう降るわなぁ」


 激しい雨音を聞きながら、開けたばかりのビールに口をつける。ふと、この雨音が呼び水となって過去の記憶が掘り返された。


 何年前だったろうか。その日も豪雨の夜だった。土産で貰った焼酎を妻と一緒に飲み交わし、夜遅くまで酔った気分を堪能したのだ。


 あの時は純粋に気持ちがよかった。全身の隅々までアルコールのが行き渡り、火照った体がふわふわと浮き上がるような感覚があって、極上の上機嫌を味わっていたのを覚えている。


 そして、夜中の二時を回った頃だったと思う。 


 妻が酔いつぶれた。そこそこ酒に強い彼女も、さすがに焼酎ばかりを呑んでいてはキャパシティを越える。普段はビールで済ませているのだから、尚更だった。


 酔いつぶれた場所はリビング。ビーズ入りのクッションに突っ伏して、俯せのまま静かに寝息を立て始めたのだ。


 妻は風呂も入らずに、パート先から帰ってきたままの服装で呑んでいた。無地のシャツにブラウンのスカートという主婦らしい地味な格好。その穿いていたスカートがはだけ、中から垣間見えた内股が悩ましかった。パンストを履いていたものだから、それが余計に夫の下半身をくすぐった。 
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