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獣に還る時
第1章 獣に還る時
 ……意識のない女が横たわっている。


 夫の頭に悪魔が囁いてきた。それが妻であっても、同意のない性交は立派な強姦である。セックスは男女ともに愛し合い、愉しむ行為。お互いの意思疎通を快楽によって確かめるもの……。


 だが逆に、滅多にないこのシチュエーションに悪魔の囁きは強まっていった。


 『無防備』という言葉に抗しがたい快感を覚えた。女が気づかぬ内に犯されていく様を想像すると、酒に酔った呼吸とは別に、荒々しくなっていくものがあった。


 ……ちょっとだけや……擦るぐらいでやめる……


 夫は獣化した心に言い聞かせつつも、着ている服を脱ぎ捨てた。全裸になったとき、すでに男根は硬く勃起していた。力を入れるまでもなく、そそり立っていた。


 ハア……ハア……と獣の息づかいを洩らしながら、わざとゆっくりとした足取りで妻の元へ歩み寄る。


 其処へ辿り着くまでの時間も、いつもとは違った流れ方をした。快感の海を泳ぐかの如く、夫はその時間をかみ締めた。


 妻は俯せのまま微動だにしなかった。捕食者の接近に気づかないウサギも同然だった。


 妻のふくらはぎに触れた。いつもなら、ここで「いやん」と恥ずかしがる彼女だが、今日は何の反応も示さない。それがまた……興奮度を一つ上に繰り上げる。


 ふくらはぎから膝裏を伝い、内股へと手を伸ばし、パンストと女の肌の両方の感触を味わう。生唾を呑んだ。酔いがまわってるせいか、息苦しいほどに呼吸が激しくなった。


 スカートは太股が見える程までめくれていたが、あえて裾を上げたりせず、そのままにする。酔いつぶれたそのままの状態が大切であった。簡単に脱がしてしまっては意味がない。


 夫の手はスカートの中を這っていった。小高くて弾力のある尻を愛で、鷲掴みにする。

 その時、ビリッ……とパンストが破ける音がした。強く揉みすぎたようで、伝線したところから裂けてしまったようだ。


 しかし夫はパンストの破れた箇所に指を入れた。ちょうど尻のワレメに沿って縦に破けているらしく、少し食い込み気味のパンティラインに指を這わせた。


 中指を突き立てて、パンツの上から性器をまさぐる。膣口と思われる柔らかい処に、指先をぐりぐりと押し付けた。

「う……ん……」


 寝息のか、それとも喘ぎ声か、妻が僅かに声を上げた。
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