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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第7章 小さな変化
「実は、わたくしの通ってる教室が無料見学を実施されてるの。せっかくですし、一緒に見に参りません?」
蛇塚さんが軽く首を傾げて聞いてくる。
なるほど、無料見学か。
確かに、一人で行くより彼女と一緒のほうが行きやすいだろうし、一度様子を覗いてみて損はないかも。
こんな機会はまずないしね。
「…うん、見てみたい。今から行こっか。」
そう思った私は、彼女の提案に賛同した。
────「龍道(りゅうどう)さん、華が見学に参りましたわ!」
はい、さっそく護身術の教室にやってきました。
どんな感じなのかと思ったけど、
見た目はダンススクールみたいな感じなのね。
壁一面が大きい鏡だ。
すると、彼女の声に反応して、
50代と見られる男性が奥の部屋から出てきた。
「あぁ蛇塚さん。…と、その隣の方は?」
「お友達の山下ユイです。よろしくお願いします。」
ペコリと一礼する。
…なんだろ、龍道さんって凄くお堅い人なのかな。
表情が全く動かないし、見た目がSPみたい。
眼鏡してるから余計にそう見えるのかもしれないけど。
「どうも、龍道です。よろしく。」
「龍道さんは本当に教え方がお上手なの!なんといっても、その〜…えっと〜……なんとかっていう所の出身で!」
蛇塚さんが説明してくれるも、
大事なところが綺麗にわからない。
それを見兼ねた龍道さんが、表情を変えずに付け加えた。
「『御堂形』(みどうかた)出身です。名前は伺ったことがあるのでは?」
…御堂形って聞いたことがある。
確か、何人もの巨匠を生み出している
日本でも有数の武道の名門。
合気道、柔道、空手。
武道のどの部門においても、
上位の選手のほとんどが御堂形出身だとか。
「す、すごいですね。そんな凄いところのご出身だなんて。」
「名ばかりの称号です。この歳になっても、私は未だに御堂形のご子息に勝てませんから。」
龍道さんが謙遜するように小さく話す。
ベテランそうな龍道さんでも勝てないって、
御堂形の息子さん、どんだけ強いの…。
「では龍道さん、わたくし達は隅で見学させて頂きますわ。」
「承知です。それでは山下さん、ごゆっくり。」
蛇塚さんの言葉に、顔を頷かせる龍道さん。
彼はそのまま踵を返し、奥の部屋に戻っていった。