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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第9章 白馬黒哉について
で、大学に行って一人暮らしを開始したわけなんだけど。
ここでは特になんの出来事も起きなかったから
飛ばします。
なんの変哲もない生活を送ってたし。
しいていえば、
ちょいちょい親父から電話が来てウザかった。
そんな感じ。
────時は流れて大学卒業後。
ここで、俺に転機が訪れる。
一般人として生きようと、
俺はこれまた変哲もない企業に就職した。
高校時代で正統派(?)な不良はやり尽くしたので、
もう問題は起こすまいと、家でのキャラを演じた。
そう、今の王子キャラである。
とりあえずはこのキャラでいれば、
まずトラブルは起きないだろう。
そう思っていたところ、早々に俺はやらかした。
「────しつけぇんだよクソ親父!」
突然の親父からの電話。
無視しても何回も掛けてくるので、
場所を変えて仕方なく出た結果。
「……白馬くん?」
────先輩に、見られた。
とりあえず通話をブチ切る。
もう血の気引きまくって、
流石の俺も思考が止まったよね。
当時は厳しめな先輩のイメージしかなかったからさ、
世界が終わった気分。
俺どうなっちゃうんだろうって。
しかも一人に見られたらすぐ周りに拡散されんじゃん。
そんな絶体絶命で、
何も言えずに固まっていたところ。
────ポンポン
突然、先輩が俺の背中を撫でてきた。
え、普通戸惑ってドン引きするんじゃねぇの?
なんでこの人こんなに平然としてんの?
「あ、あの、山下先輩……」
そう、口を開きかけたとき。
彼女は前を向いたまま、柔らかく微笑んで告げた。
「大丈夫です。人間誰しも色んな事情を抱えてるものですから。」
……背中を撫でる手と、彼女の口調があまりに優しくて。
素を見ても軽蔑してこない。
媚を売るような、見た目に釣られる人でもない。
ただ純粋に、そのままの俺を見て受け入れてくれる。
それは、俺がずっと求めてやまない人だった。