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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第10章 甘い微熱と寂しさと




────「ほい先輩、りんご食べて。」


それから風邪が治るまで、
彼は毎日仕事終わりに私の家に寄ってくれた。

お陰で気分が沈むどころかワクワクの方が大きくて。

こんなふうに熱を治すの初めてだよ。


「……まだ食欲でない。」
「口移しするよ?」
「すみません食べます。」


でも彼、結構強引なところもある。
優しさが感じられるから平気なんだけども。

口元に差し出されたりんごをパクリと食べる。

うーん、味がしない。
熱出ると味覚無くなっちゃうよね。



────あ、そういえば。



「白馬くんごめんね、あのとき会社で倒れ込んじゃって。私との関係疑われちゃったでしょ?」


不意にあのときのことを思い出した。

結局どうなったのだろう。
あのヒソヒソは確実に私達の関係を疑う声だ。

さすがの白馬くんも
対処に困っているのではと思ったんだけど……



「あぁ、もう手は打ったんで大丈夫です。」



……あっけらかんと答えてきた。

すごいなぁ、あれをどうやって収めたんだろ。


遠い目で彼を眺めていると、
その視線に気付いた彼が不敵な笑みを浮かべた。


────ゾクリと走る嫌な予感。



「ただ、先輩が仕事復活した日はちょ〜っと大変かもしれないんで、口裏合わせよろしくお願いしますね?」



子供のように小首をかしげてお願いされる。


きっと、「ちょっと」じゃない。
この意地悪な顔は「かなり大変」って感じだ。









……本当に、一体なにをやったんだ。










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