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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
……そこで、わたくしは聞いてしまったの。
「……っ鬱陶しい蛇のことなんか好きなわけねぇだろ!!」
────兎が、怒鳴るようにそう話すところを。
いけない。
まずいことを聞いてしまった。
思考が停止しかけた頭を必死に回転させて、
ともかくわたくしはその場を去りました。
考えてみれば確かにそうね。
わたくしは昔から守られてばかりで、
あの人になにもしてあげられてなかった。
……自分でも思いましたわ。
わたくしって本当、鬱陶しい。
家に帰って冷静になると、
涙が勝手にポロポロこぼれてきて。
兎に今日の勉強を断らなきゃ、とか。
ごめんなさい、とか。
そんなことを思いながら、
一人、玄関で膝を抱えながら泣いていたところ。
「蛇、俺だ。来たぞ。」
────ノックと共に、玄関越しから兎の声が聞こえた。
「っ…開けないで!」
「はぁ?」
もっと良い言葉があったはずですのに。
彼と会いたくない一心で、
そんな言葉が口をついて出てしまった。
先ほど家に着いたばかりで、玄関の鍵が開いていたから。
兎は人の言うことを無視するタイプ。
彼が扉を開けてしまう前にと、
わたくしは咄嗟に立ち上がってドアノブを引っ張ったの。
でも、男性の腕力に叶うはずもなくて。
「っ、おい蛇、よく分かんねぇけどとりあえず話しさせろ!」
「いやっ!お願い、開けないで……っきゃ!」
兎が思い切り玄関を開けた拍子に、
わたくしが後ろにバランスを崩してしまったの。
「…っバカやろ……!」
倒れてしまう前に、
兎が咄嗟に腕を伸ばして
わたくしを支えようとしてくれた。
けれど、同時に彼も体勢を崩してしまって。
結局、二人一緒に玄関に倒れ込んだの。
わたくし運動神経は良かったから、
倒れながらも上手く受け身を取れたわ。
頭を打つとか、そんな怪我は一切なかったのだけれど。
────ムニッ
「……っ?!」
……彼の手が、たまたまわたくしの胸を掴んでしまう
アクシデントが発生したの。
更には彼に押し倒されてる状態。
頭がパニックになりながらも、
離れてもらおうと彼の顔を見上げたわ。
でも、そこにいたのはわたくしの知る彼ではなかった。