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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
────兎谷サイド────
『どうして兎がここにいらっしゃるの?!』
蛇と話そうと彼女の部屋の前に立ったとき、
突然襖が開かれ、彼女と目があった。
なんつータイミング。
心の準備もクソもねぇ。
「……昔のことを話したい。」
蛇にそう告げると、
アイツは不意に悲しそうな表情を浮かべた。
目を涙ぐませて、恨めしそうな、辛そうな。
よくわかんねぇ複雑な表情。
「なによ……、あなたわたくしのこと嫌いなんでしょう?」
────コイツも、山下と同じことを。
「……っおい、それって一体どういう……」
「だって!あのとき教室でわたくしのことが嫌いと仰ってたじゃない!」
……あぁ、やっぱ聞かれてたのか。
蛇が声を荒げて俺に感情をぶつける。
それでも彼女の表情に、怒りの感情は無かった。
あれを聞いていたのに。
ただただ、彼女にあるのは悲しみだけ。
俺が当時のことを弁解をする前に、
蛇は俺の前から走り去った。
それを聞いていた山下が
俺の代わりのように蛇の後を追いかける。
……俺に彼女を引き止める権利など無いような気がして。
強引に腕を掴んで止めるとか、
ましてや後を追うなんて到底出来なかった。
なんてザマだ。
「くっそ情けねえ……。」
一人頭を抱えながら廊下に立ち尽くしていると、
突如部屋の襖が勢いよく開かれた。
「そう思うならさっさと追いかけろよ。」
そこにいたのは白馬とバーサーカー。
白馬が俺をたしなめるように、鋭い目つきで俺に告げる。
コイツらにも軽く幼馴染の話をしたことがあるから、
蛇が幼馴染だと既に察しがついていたのだろう。
「……でも、俺が行ったところでアイツは嫌がるに決まって……」
そう躊躇いの言葉を吐く俺に、
白馬が軽くキレた様子で俺の胸ぐらを掴んだ。
「だぁもう、うさの癖に面倒くせぇな!彼女がどうこうじゃねぇんだよ、お前はどうしたいかっつーだけの話だろうが!」
「……っ!」
白馬の言葉に思わず面を食らう。
俺は、どうしたいか。
蛇がどう思うとか、そういうことを抜きにして、
ただ純粋に俺の望みだけを。
────そんなの一つに決まってんだろ。
「……アイツを追いかけてぇ。もう俺のせいで大変な目に遭わせたくねぇんだよ……!」