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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
────山下サイド────
まずい、完全に蛇塚さん見失った。
というか蛇塚さん足速くない?
運動神経いいとは言ってたけど、もはや陸上部並の速さだよ。
しかもこの方角。
「……庵林大社に近いよね、これ。」
あの時うさが言っていた、
「変なやつがいっぱいいる」っていう神社の方だ。
蛇塚さんはこのまま真っ直ぐに進んじゃっただろうから、
下手したら行き着いてる可能性もある。
「どうしよう。蛇塚さんも危ないんだけど……」
……私もさっきから、やけに誰かの視線を感じる。
寒気が止まらないし、心臓の鼓動が嫌に響く。
庵林大社が近いから?
それとも普通に人が近くにいるとか?
正直この状況、幽霊であった方がまだマシかもしれない。
人だと普通に身の危険がある。
視線が感じるのは私の後ろ。
気のせいかな、謎の足音も近づいてる気がする。
私は強張った身体を奮い立たせ、
意を決して後ろを振り返った。
「っ……?!」
そこには、
ハッキリと見える黒い人影。
ヒュッと喉が高く鳴る。
人?幽霊?
そんな判別がつけられる余裕なんてない。
心臓がうるさくて、
脳が必死に警鐘を鳴らしている。
まずい、このままじゃ危ない。
私は咄嗟に前を向き、
走って逃げようと足を踏み出した。
そのとき。
────「ひゃっ?!」
急に腕を後ろに引っ張られ、体勢が後方に崩れた。
わたしがそのまま倒れ込む前に、
後ろから抱き込む形で身体を抑えつけられる。
身動きが取れそうにないのに、
誰?とか。
このままじゃ危険だ、とか。
そんなことよりも、
私の気持ちはある一つの感覚で埋め尽くされた。
……あれ、なんか、知ってる。
少し低めの体温、落ち着く匂い、
私の前に回された、大きな手。
これって────────
まさかと思い、
そっと顔をあげて振り返れば。
「油断してると突然誰かさんに襲われちゃうかも〜……ってね。おみくじって当たるもんだね、先輩?」
「〜〜……っ!」
私を見ていたずらに微笑む、白馬くんがいた。
安堵感で胸がいっぱいで、身体が一気に脱力していく。