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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第12章 兎と蛇
「……も、やだ、びっくりした……。」
「ごめんごめん、意地悪しちゃった。」
白馬くんがクスクスと笑いながら謝る。
彼が来たことで、
張り詰めていた緊張の糸が途切れたのか。
私は蛇塚さんが
危ない状況に置かれていることを思い出した。
「……っそうだ、白馬くんどうしよう!蛇塚さん見失っちゃった上、あの危ない神社に近付いてるかもしれない!」
白馬くんの腕から離れて事情を説明すると、
彼はあっけらかんとした表情で答えた。
「うん、ほぼ確実にそうだろうね。」
「そうだろうねって、それマズイよね?!」
軽い。非常に軽い。
焦るわたしとは正反対に、
白馬くんはとても落ち着いた様子。
彼はなだめるように私の頭を撫で、
「大丈夫」と小さく笑った。
「先輩。残る俺たちのミッションは部屋でみんなの帰りを待つことだよ。」
……どういうこと?
ポカンとした顔を浮かべる私をよそに、
白馬くんは私にあるものを見せてきた。
小さなボトルに入れられた、見覚えのあるそれは。
「……フリが持ってた香水?」
参道でフリとうさに合流したときに、
フリが持っていた香水だ。
確かあのとき、「香りをお裾分けする」って言って、
フリが全員に香水をつけてくれたような。
「そ。この匂いを頼りに、フリが先輩のとこまで案内してくれた。蛇塚さんは匂いが薄まってたけど、ここまで近付けばフリはたどり着ける。
先輩が彼女を追ってくれたお陰だね。」
なるほど、そういうことか。
チョコの匂いで迷子を回避できるフリなら可能だ。
蛇塚さんの香水の匂いが薄まってたのは、
たぶんお風呂に入ったから。
ということは、
フリが蛇塚さんの救出に向かっているわけで。
「そっか、でも大丈夫なの?私たちも神社の方に向かわなくて。」
「ん?あー平気平気。この状況において、いま一番強いやつが迎えに行ってるから。」
白馬くんが手を横に振りながら答える。
常識的に考えたら白馬くんより強い人はいないはずだけど、
幽霊の多い神社という場所においては話が別だ。
もしかして。
「うさが、助けに────────……?」