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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
「そっか、それは良かったね。」
「おう!だからよ、今日はユイの行きたいところに行こう!何処へでも連れてってやるよ!お祝いだ!」
楽しげに笑いながら腕を強引に引っ張られる。
まずい、このままじゃ別れ話を切り込むタイミングを失っちゃう…!
危機感をおぼえた私は、咄嗟に掴まれた腕を全力で振り払った。
「ご、ごめん平田くんっ、今日は何処にも行く気はないの。」
機嫌が良い今なら、聞く耳を持ってくれるかもしれない。
あわよくば怪我を負わず、お互い平和に関係を断ち切れたら。
────そんな私の願いは、早くも儚く崩れ落ちた。
「…は?」
低く、地を這いずるような恐ろしい声音。
思わず喉が引きつる。
先程までの楽しげな表情は欠片もなくて、
ただひたすら、ひどく冷たい目で私を見下ろしていた。
…暴力を振るうときと、全く同じ表情だ。
「じゃあなに、今日は何しに来たわけ?」
苛立ち混じりの声に肩が震える。
しかしここで逃げれば、もう二度と別れは切り出せない。
言え。今日で終わりにするの。
私は手の中のお守りを握りしめ、グッと平田くんを睨んだ。
「…今日は、別れ話をしに来ました。」
目は逸らさない。絶対に関係を断ち切ると決めたから。
彼は困惑と苛立ちの表情を浮かべ、次の瞬間、力任せに私の腕を引っ張った。
彼はそのまま歩きだし、半ば引きずられるような形で連れ出される。掴まれてる腕が痛い。
私の声が聞こえてないの?
制止の声をかけても全く反応しない。
「ねぇっ、ちょっと待って!平田く…」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ」
ブツブツと取り憑かれたように呟いてる。
その姿に全身が総毛立った。
数分間歩き続け、連れてこられた先は人気のない路地裏。
なんでこんな場所知ってるんだろう。
掴んでいた私の腕を思い切り前に引っ張り、湿ったコンクリートの地面に投げ出される。
気づけば雨が降り出していた。