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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
「お願い、私の話を聞いて平田くん!」
「あーあ、せっかくいい気分だったのに…。お前のせいで台無しだ。道理でおかしいと思ったわ、俺が言ったルールをことごとく破ってよぉ。」
彼は地面にしゃがみ込み、スカートが乱れて露わになった私の太ももに手を這わせる。
「なぁ、痛ぇよな?このアザと擦り傷。これ全部俺の物って印だよ。愛されてる証をこんなに刻まれて…ユイは幸せ者だなぁ?」
…ゾクリと背筋が凍る。
彼の目は虚無だ。
光も、私の姿も、何も映さない真っ暗な暗闇。
もう私の知ってる彼はどこにもいないんだ。
私はなんて馬鹿なんだろう。
今更そんなことを痛感するなんて。
次第に雨脚が強まり、雫が肌を伝って体温を奪う。
冷えた指先。力が入らない。
それでも、もう私に逃げ道なんて残されていないから。
私は冷たい拳をグッと握りしめ、意を決して口を開いた。
「…ねぇ、平田くん。私、あなたが何と言おうと意思は変わらないよ。それに、あなたの物でもない。
私は私で生きるから…、もうこれ以上、暴力で人を繋ぎ止めておくような人と一緒にいたくない!」
その瞬間、私達のいる路地裏を強い風が吹き抜けた。