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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
一方、華麗に着地する飛び蹴りをかました張本人。
ここに居るはずのない人の姿に、私は目を見張った。
「うそ…どうして…」
青いクマ型の仮面に、特徴的な柔らかいミルクティー色の髪。
それは紛れもなく────
「クマレンジャーブルー、参上。」
私の大好きなヒーローの仮面をかぶった、白馬くんの姿だった。
「白馬くん…だよね?どうしてここに…」
「今はクマレンジャーブルーでござる。」
彼は着ていたコートを脱ぎ、私の肩に羽織らせる。クマレンジャーとは言っても仮面をしているだけで、その他はガッツリ白馬くんだけど。
「…遅くなってごめんね。」
なんで申し訳なさそうに言うんだろう。
私の頭を撫でる手が優しい。
聞き慣れた声とその体温に、張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れた。
「ううんっ…、来てくれてありがとう…っ。」
安堵感と先程までの恐怖がドッと押し寄せ、声が震える。
なんだか泣きそうだ。
するとその時、後方から鉄パイプの転がる音が鳴り響いた。
平田くんだ。どうやら気は失ってなかったみたい。
「ってぇな…。もしかしてお前か?ユイの新しく出来た男ってのはよぉ…。」
地面に落ちた果物ナイフを拾い、白馬くんに向けて構える。
傷つける標的が私から彼に移ってしまった。
それでも白馬くんは鋭利なナイフに動じることなく、平然と平田くんの元へ近づいて行く。
「ま、待って白馬くん!危ないから逃げて!」
相手は凶器を持ってるのに…!
それでも、彼はどんどんと距離を縮めていく。
「…アンタが平田?随分トチ狂った目してんじゃん。」
「あ"あ"?!」
ナイフの切っ先との距離は既に数十センチ。少し振り上げれば届いてしまいそうな距離に、最悪のケースが頭をよぎる。
「ねぇ!お願いだから早く逃げて!」
私がどんなに叫んでも聞き入れる様子がない。
彼を巻き込ませたくなくて行動したのに、これでは本末転倒だ。
そんな私の思いなどつゆ知らず、彼は更に平田くんを煽りだした。
「暴力振るわなきゃ自分の女繋ぎ止めておけないとか笑うわマジ。あぁそれともアレ?自分の弱さを隠す為に暴力で従わせてたとか?はっ、クソだっせぇ。」
嘲笑するような声。
ナイフを持つ平田くんの手がワナワナと震えだす。