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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
すると、彼の身体を抑えていた白馬くんがふいに立ち上がり、私の元まで歩いてくる。
私と目線を合わせるようにしゃがみ込み、
いつもの穏やかな優しい表情で口を開いた。
「先輩、彼に言いたいことはある?」
────言いたいこと。
鬱憤?怒り?悲しみ?
色んな感情がごちゃまぜに襲ってくるけど、
きっとどれも違う。
「…うん、ある。」
思い浮かんだのはたった一言。
差し出された白馬くんの手を貸り、力の出ない足でフラフラと歩いていく。
予め呼んでおいたのかな。
後ろでパトカーのサイレンが鳴り響いていた。
「…平田くん。」
その場で俯き、立ちすくんでいた彼がピクリと反応する。
きっと、平田くんとはこれが最後。
嘘偽りのない心からの言葉を。丁寧に、祈るように。
「…好きって言ってくれて、ありがとう。」
彼が驚いたように顔を上げる。
隣で私の身体を支え、見守っていた白馬くんも目を丸くした。
どんな形であったとしても。
それが例え、相手を傷付けるような、
おかしなことだとしても。
彼にとっては、愛だったみたいだから。
「…イキマショウ。」
外国人さんが、もう時間とばかりに平田くんを引っ張って歩く。止まっていた二台のパトカーから二人の警官が降り、彼らにその身柄を引き渡していた。
あっけない終わり方。
平田くんは自ら車に乗り込み、
街中でサイレンを響かせながら連行される。
────『好きって言ってくれて、ありがとう。』
その言葉を告げたとき、
彼の目には、しっかりと私の顔が映っていたような気がした。