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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
この人は一体どこまで計算しているのだろう。
もうお手上げ状態だ。
私は視線を前に戻し、ふっと力なく笑った。
「…さすが白馬くんだね。なんでもお見通しだ。」
すると白馬くんは視線だけをこちらに向け、
片手でワシャワシャと雑に頭を撫でてきた。
「無理して笑っても可愛くないっスよ。」
「…うん。」
ぶっきらぼうな言い方。それでも、それが彼なりの優しさだと分かるから嬉しくなる。
撫でられてボサボサになった髪を手櫛で直していると、急に車のブレーキがかけられた。
何事かと外を見れば、目の前には私の住んでるアパートが。
「どーぞ、着きましたよ。」
────さよならの時間だ。
「…ありがとう、送ってくれて。」
寂しく感じてることを悟られないよう、
外を見たままお礼を言う。
「いーえ。あぁそうだ、盗聴器とGPSはこっちで処分するんで貸してください。…助ける為とはいえ、勝手に仕込んですみませんでした。」
そんな申し訳なさそうに謝らないでほしい。
こっちは感謝してもし足りないくらいなのに。
頑張って寂しい顔をいつも通りに戻して、2つの機械を彼に手渡す。
「謝る必要ないよ。本当にありがとう。白馬くんが来なかったら、私今頃病院だろうし。」
自嘲するように笑うと、「だから可愛くねぇって」と怒られてしまった。
頭を撫でくり回されて、また髪がボサボサだ。
「ほら、もう遅いから、今日は早く帰って寝てください。体壊されたらこっちにまで余計な仕事増えちゃうんで。」
「…それもそうだね。」
口を尖らせて茶化すように言われる。
確かにそうだ。
体を壊して迷惑をかけることだけは絶対避けたい。
…そう、頭ではわかっているのに。
────どうしよう、帰りたくない。