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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第3章 本物のヒーロー
こんなのおかしい。
ドアのレバーに手をかけたまま、体が動かない。
いつもならすんなりお別れできるのに。
どうしてだろう、今日ばかりは違った。
一人で夜を過ごすことが、
とても怖くて、とても寂しい。
「先輩?どした?」
白馬くんが不思議そうに聞いてくる。
ほら、ドアを開けて、車を降りて。
あとは笑顔でお礼を言えばいいだけじゃんか。
それなのに、レバーにかけた手は小さく震え、足にも力が入らない。降りたくないって全身が拒否してる。
「う、ううん、なんでもない。今帰るから…。」
でも、本音を言ったところで彼を困らせるだけ。
そう分かってるから。
動け、私の身体。
これ以上彼に迷惑をかけたくないの。
早く、早く。
言うことの聞かない身体に必死に信号を送っていると、
彼がそれを察したように言葉を発した。
「…先輩、俺ワガママな子が好きなんスよ。」
…へ?
突然の謎告白。
びっくりして後ろを振り返ると、
白馬くんが優しく微笑んで私を見つめていた。
「ね、聞かせて。先輩は今どうしたいの?」
────あぁ、やっぱりこの人には敵わない。
「…白馬くん、どうしよう…帰りたくないよ…。」
気づけば視界は涙でぼやけ、
震える声で言葉を零していた。