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会社のドSな後輩王子に懐かれてます。
第1章 名前は白馬。見た目は王子。
彼女たちの言葉を適当にかわし、一礼してその場を後にする。
大丈夫、白馬くんをオオカミの群れの子羊になんてさせない。
店を出てすぐの角。
多分ここを曲がれば店からは見えない。
よし、白馬くんに電話しよう。
二人していきなり用事を思い出すのはあまりに不自然だけど、電話で急に用事が入ったとなれば違和感なく受け入れてもらえるよね。
そこでふと、私のちょっとしたイタズラ心が疼き出した。
「普段あんなにやられ放題なわけだし、たまには困らせてみてもいいよね…?」
昼のメールの仕返しだ。かわい子ぶった猫なで声で、ぶりっ子みたいに話してやろう。きっと電話ごしに固まるか、寒気たつかのどっちかだ。
さぁさぁ楽しくなってきましたよ!
フフッとほくそ笑みながら、電話の発信ボタンを指で弾く。
イタズラって何歳になっても楽しい。
────プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。
コールがちょっと長めに四回。
────プツッ『はい白馬です。』
出た!
「ン”も”っ、ン”ン”ン”!あーあーあー、も、もしも〜し、ユイだよ〜♡ねぇ黒哉ぁ今どこにいるの〜?アタシぃまだ全っ然呑みたりないんだけど〜♡」
あ、待ってコレ想像以上にキツイやつだ。鳥肌止まらないし、出だし思いっきりダミ声になったし。
白馬くんごめん、こりゃとてつもなく気持ち悪いわ。
…気持ち悪い、はずなのに。
『あぁユイピー?相変わらず君は可愛らしいダミ声をだすね。寂しい思いさせてゴメンね?今すぐそっちに向かうから、いい子で待ってるんだよ、マイハニー♡』
なんで君はそんなにノリノリなんだ!なにユイピーって!なにマイハニーって!ノリノリすぎて逆に困るよ!
「…あ、あのー、白馬くん?いやホントごめん、ちょっとしたイタズラ心でさ、うん。乗っかってくれるのは非常に嬉しいのですが、無理しなくていいので。とりあえずその場から抜けて…。」
『先輩。』
急に低い声で遮られる。
「はいっ、なんでしょう。」
思わずピシッとかしこまると、電話越しにクスッと小さな笑い声が届いた。
そして一言。
『今夜覚悟してね?』
────プツッ、プー。プー。
「…え?」
言われた意味を全く理解できないまま、無情にもそこで電話が切れた。