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堕ちる人妻
第1章 堕ちる人妻
「ああっ……イク……もうイクぞ」


 その獣の一言に、私はリズミカルに動く下半身に揺らされるまま頷くことも出来ませんでした。

 獣は自分の快楽に呑まれて気づいていないようですが、私はすでに痙攣を起こし、膣をヒクつかせていたのです。男の肌を感じて迎えた初めての絶頂。男根の模造品を突っ込んで自らイクのとはワケが違います。獣のセックスは乱暴すぎて下手くそだけど、肉棒から伝わってくる純粋な激情が私を貫いたのです。しかもイってる最中にも腰を振られているので、危うく気を失いそうになってしまいます。


 しかしこの瞬間、常に受ける側である女にとっては最大の隙でもありました。拒むことができない。されるがまま。絶頂に達したことで無防備となったこの状態が、私の意思表示を阻んだのでした。


「中に……いいやろ?」


 獣のピストンも絶頂に至ろうとしたとき、私は不意打ちを食らったように目を見開くことしかできませんでした。もはや拒絶する言葉すら浮かばずに、何も考えられないまま、獣が放つ雄としての本能に押し流されるのです。


 私は天井を見つめました。ゆったりと回転しているシーリングファンの羽根に、いつぞやの日々が投影されました。


 アナタの顔が、笑顔が、体が、胸板が、体温が、性器が……まるで走馬燈のように浮かび上がります。そして最高潮に達した獣の腰が私を一突きするごとに、それらの過去が一つ一つ消滅していくのでした。


 次の瞬間、激しく前後していた獣の腰が静止しました。根元まで咥え込んだ私の膣内で、火照った肉棒がビクビクと小刻みに震えているのを感じます。


 獣は私のもも肉を千切りとらんばかりにしがみついて、しばらくそのままでした。


 射精の余韻に浸っている獣と目が合いました。この時、私は自分がどんな表情をしたのかよく分かりません。怒っていたのか、焦っていたのか、それとも無表情だったのか。


 いずれにせよ欲望のままに果てた獣は一人の男の顔に戻って、私に軽いキスをしてきたのでした。 
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