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第2章 　精子狩り

　「いまや売春は、男が買われるものになった」と週刊誌は書いた。
　「いまや性奴隷労働の被害者は男の時代になった」と書く週刊誌もあった。
　「この事件の難しいところは、被害者が、まったく被害者としての自覚がないことだ」と警察関係者が語った。
　「事件の背後には、セックスレスに悩む多くの女性がいる」とニュースのコメンテーターが解説した。
　「人口減少に対する政府の無策の招いた結果だ」と野党の政治家までが言い出した。

　さらに社会が驚いたのは、この事件が明るみに出ると、同じような体験をした沢山の若者が現れたのだ。
　それは一人二人の問題ではなかった。最初は数人だった体験者が、数百人規模にまで膨れ上がったのだ。

　まさに警察関係者が語ったように、被害者が被害者としての自覚のないまま社会全体に『精子狩り』が蔓延していることが明らかになったのだ。
　
　そこに、ある大学の研究機関の調査が公表された。
　その研究機関の調査報告は、生殖機能を喪失した膨大な男性の存在を明るみに出した。
　その原因としてクローズアップされたのが『内分泌かく乱物質』いわゆる『環境ホルモン』であった。