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第5章 　漏洩

　「結婚した女性の中にも不能な男性と結婚し、セックスレスに悩む女性が多数存在します」
　ここまで言って、岡野詩音はチラッと杉崎正孝に目を向けた。
　すると忖度派杉崎正孝が立ち上がった。

　「どうでしょうか、ここは欧米流よりイスラム流を参考にしては」

　「イスラム流？」思わず矢部首相がオウム返しした。
　「一夫多妻です」
　「それがあったか」矢部首相の顔に精気が戻ってきた。

　問題提起した岡野詩音がふたたび立ち上がった。
　
　「近代市民国家の家族関係は個人的性愛に基づいて成り立っております。一夫多妻は個人的性愛を無視、夫婦が同等の権利を有することを基本とした憲法に違反します」
　「憲法違反か・・・うーん、杉崎君、君の見解を聞きたい」

　二人の関係に期待した矢部首相が杉崎を指名した。

　「首相、岡野さんのおっしゃっている個人的性愛とは、平たく言えば、嫉妬の問題であります」
　「なに、嫉妬・・・・」
　
　忖度派杉崎の説得に期待した矢部首相、「嫉妬」の二文字にグーの音もでない。