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海猫たちの小夜曲
第5章 時間よ、止まれ ~海色のグラスと小麦色の少女④~
「それに、君が叔父さんや従兄にレイプされたことを泣きながら僕に告白している最中、僕が何を考えていたか、わかるかい?」
「……いいえ。」

「僕はすごく興奮していたんだよ。君があの下品な叔父さんや従兄にどんなふうに犯され、どんな感じで乱れたんだろう、ってね。君が泣きながら自分の傷を告白しているときに、僕は君に同情しながらも、そういう興奮が湧いてくるのを、止めることができなかったんだ。ありていに言えば、僕は、君の叔父さんや従兄と大して変わらない下劣な男なんだ。僕のような男と付き合っても、君自身が不幸になるだけだろう。」
「そんな……」
 先生の言ったことは驚きだったが、あたしの中に先生に対する軽蔑は湧いてこなかった。それどころか、先生があたしなんかで興奮してくれたんだ、という悦びさえ感じていた。
 
 だけど、その時のあたしはそれ以上、先生に食い下がることができなかった。
「……わかったら、僕みたいなおっさんのことは心の奥にしまって、年相応の男の子と、まともな恋愛をしなさい。」
 それだけ言うと、先生はあたしを促して、車に乗り込んだ。
 
 あたしだって、先生みたいな大人の男の人が、真剣にあたしみたいな小娘と恋愛してくれるなんて思っていない。先生が八潮津にいる間だけでも、あたしを抱いてくれて、この何もない街で、一人で居ることの慰めにしてくれるなら、それでよかった。
 
 だけど、先生の寝取られという性癖はそういうあたしの覚悟さえもはるかに超えていて、その時のあたしには、自分がどうすればいいのかさえ、よくわからなかった。
 
 結局、その後、車の中で、あたしは先生に何も話すことができなかった。


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