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海猫たちの小夜曲
第5章 時間よ、止まれ ~海色のグラスと小麦色の少女④~
 その翌週の土曜日、7月になって最初の土曜日に、あたしは、先生と遥、幼馴染の文也に手伝ってもらって、叔父の家から、新居に私物を運びこんでいた。
 6畳フローリング1K南向き、キッチン・ユニットバス付、家賃26000円也。
 それが、あたしの新しい部屋だ。
 
 両親が離婚して、扶養者のお父さんも海外に出かけている遥は、せっかくだし、このままあたしの家で一緒に暮らそうよ、と言ってくれたけど、さすがに、そこまで甘えるわけにはいかない。
 もっとも、引っ越しと言ってもあたしの荷物でかさばるものといえば、ダイビング関連のものくらいしかないので、引っ越し作業は手伝いに来てくれた遥や文也が拍子抜けするほどあっさりとしたものだった。
 
 午前中だけで、あたしの引っ越し作業は終わり、あたしは、先生のログハウスのデッキを借りて、手伝ってくれたみんなに、ささやかな慰労会を催していた。
「つーか、望海って昔からモノを持たなすぎなんだよ。この程度の手伝いでバーベキューの慰労会とか、こっちが申し訳なくなってくるぜ。」
「ふーん、でも文也ってば、そういう殊勝なこと言うわりには、焼けるはしからしっかり肉食べてるじゃん。」
 さっそく、文也が軽口をたたいてきて、あたしが返す。
 それはあたしにとって、よくある日常の一コマだったが、ようやく、そういう穏やかな日常が戻ってきたことが嬉しかった。
 わたしがバーベキューで肉やらエビやらを焼き、文也も先生も美味しそうに食べてくれている。
 先生はどちらかというと、肉よりビールの方を楽しんでいるのかも知れなかったが。
 普段、学校では、あまり明るい顔を見せない遥も、今日は楽しそうだ。
 
 あたしはみんなの笑顔を見ながら、自分に訪れた幸福をかみしめていた。
 この間まで、陰鬱な叔父夫婦の家で行き場のない孤独感に苦しめられていたのが嘘のようだ。

 そして、あたしにこの幸せをもたらしてくれたのは、間違いなく先生と遥だった。
 楽しそうな先生と遥の顔を見ながら、あたしは改めて、この2人の傍に居たいと願った。

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