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海猫たちの小夜曲
第5章 時間よ、止まれ ~海色のグラスと小麦色の少女④~
 遥がよく泊っているという屋根裏の客間は、キングサイズの大きなベッドが1つおいてあって、あたしと遥の2人でも、ゆったりと眠ることができそうだった。
 あたしたちはベッドの横の間接照明の光だけ残して、お風呂あがりの髪をとかしながら、いろんな話をした。

 叔父の家でのこと。
 学校のこと。
 水泳部のこと。
 ダイビングのCカードの講習のこと。
 シュノーケリングで行きたいスポットのこと。
 そして、先生のこと。

「ねえ、望海って……先生のこと、好きでしょ?」
 遥が、あたしの顔を覗き込むようにして聞いてくる。
 どうせ遥には、あたしの気持ちなんてとうにばれているだろうし、今さら隠してもしかたない。あたしはこの前、見事に失敗した先生への告白を、包み隠さず遥に話した。
「……うん。でも、振られちゃった。僕は、まともな恋愛ができないんだ、って。」
「じゃあ、望海も先生から聞いたんだ。「寝取られ」の話。」
「うん。だけど、それって、遥も知ってるの?」
「そりゃ、そうだよ。だって、わたしも先生のこと、好きだもん。」
 遥は、まるで隠す気もないように自分の気持ちを教えてくれた。

 だけど、遥から先生のことを好きだ、と聞かされても、あたしは恋敵とかライバル出現、という気にはならなかった。
 そもそも、先生のために他人に抱かれる、というハードルが高すぎるのだ。
 そこを超えないことには、そもそもスタートラインにすら、立てないのだから。

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