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海猫たちの小夜曲
第5章 時間よ、止まれ ~海色のグラスと小麦色の少女④~
 その翌週は夏の大会を控えて、水泳部の練習が佳境に入っていた。
 最後の大会を控えた3年生の手前もあって、あたしは珍しくバイトを休んで水泳部の練習に精を出していた。

 もっとも、あたしみたいなバイト命の不真面目な部員は、夏の大会とはいっても、個人記録くらいしか関心がない。顧問の先生はあたしをメドレーリレーのメンバーに入れたいと言ってくれたが、あたしは、あっさりと先生の申し出を断っていた。

 そういうのは真面目に練習してる人が選ばれるべきです、と先生に申し出て、自分から辞退したのだ。顧問の先生は納得していなさそうだったが、メドレーリレーのメンバーなんかになったら、それこそバイトどころではない。
 真面目に練習しないと、メンバーから吊るしあげられるのは目に見えていた。
 今のあたしにとっては、水泳部の練習より、先生といる時間の方がずっと重要だった。
 
 なのに、練習でへとへとに疲れ果てて、先生のところにも行けないのが、恨めしくてならない。
 もっとも、それについては真面目な部員の遥も同じようだったが。

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