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海猫たちの小夜曲
第6章 はじめての夜 ~潮風と白い素足の少女①~
 
 
 6限目の授業が半ばを過ぎ、開け放した教室の窓から、潮の匂いの交じった5月の風が吹き込んできた。
 わたしは机に肘をついて、もう嫌になるほど嗅いでいる潮の匂いを反芻しながら想う。
 この街は、退屈だ。
 いや、この学校も、この街の女の子も、男の子も、大人たちも、何もかもが、だ。
 先週、転校してきたばかりだというのに、わたしはもう、自分の新しい生活に見切りをつけそうになっていた。


 半年前、わたしの父と母は、3年の別居の末に離婚した。
 よくもまあ3年も別居を続けたもんだ、と思うが、3年の別居の末に、母は父を見限って会社の同僚と再婚することを決めた。
 わたしの父は鯨の研究者で、色んな国の捕鯨船に乗っては、南氷洋やら、北極海やらに出かけていて、1年の3/4は家にいない。
 大学生のときに知り合ったとはいえ、なんで、こんな風来坊のような男とごくごく普通の女性である母が結婚したのかは、別れた今となっても全くの謎なのだが、結果的に別れることになったのは、娘の私から見ても、当然かつ自然な流れだったと思う。
 
 離婚のときに、わたしは母についていくこともできたし、母もそう望んでくれたのだが、わたしは新しく父になる人とうまくやっていく自信がなかった。何せ、わたしにとっての父親というのは家にいないのが普通で、毎朝、朝食の席で、父におはようと言ったりする生活、などというものは想像もできなかった。

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