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海猫たちの小夜曲
第6章 はじめての夜 ~潮風と白い素足の少女①~
 それから、わたしはネットで寝取られ、というものについて調べてみた。
 実際、そういう性癖の人はそれほど珍しくないようだった。ネットの掲示板などを見る限りでは、自分の恋人や奥さんを抱いてくれ、という依頼の書き込みも結構ある。
 谷崎潤一郎あたりの小説に出てきそうな話だと思ったが、現実にあるのだ、というのは、わたしにとって少しばかり驚きだった。
 
 確かに、先生や、この人たちの愛情は著しく歪んでいる。
 だけど、どれほど歪んでいようと、愛情には違いない。
 他人に自分の大切な人を抱かせ、嫉妬の炎で心を焼きながら、己の愛情を確認する。
 そういう愛の形も世の中にはあるのだ、ということを、わたしは知った。


 だけど、寝取られというのはこういうものなのだ、と認識することと、自分がそういう歪んだ愛情を受け入れることができるか、というのはまるで別の問題だった。
 倦怠期の夫婦とか、それなりに続いている恋人同士とかならともかく、15歳の処女のわたしには、あまりにハードルの高すぎる恋愛のような気がした。
 
 何度か、やっぱり自分には無理だ、諦めよう、とも思った。
 父について、八潮津に行こうと思った裏には、東京を離れて先生のことを忘れよう、という考えも少しだけあった。もっとも、先生のサバティカルの逗留先が八潮津になって、わたしの判断はまるで無駄になってしまったが。
 
 もちろん、寝取られ、という性癖を抜きにしても、先生が、わたしを受け入れてくれるという保証はなかった。そもそも未成年と恋愛なんかできるわけがない、という答えも、普通にあり得るのだ。
 けれども、半年以上悩んでも結局、わたしは先生のことをあきらめられなかった。
 八潮津に引っ越して、すぐにまた父は海外に行ってしまい、離婚して母も居なくなったので、わたしはむしろ、東京にいたときより、先生のところに出入りしやすくなっていた。

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