この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
海猫たちの小夜曲
第2章 絶望の始まり ~海色のグラスと小麦色の少女①~
そして、今日はお客さんのなかに一人だけ、明らかに街の人とは違う風体の人がいた。
その人は薄手のジャケットをはおり、カウンターに一人で座って、至極真っ当な食事をしていた。
夜も出せるけれど、わざわざ夜に頼む人もいない定食のメニューにビールを足して、美味しそうに食べている。
「……で、先生はこれから毎日、潜るのかい?」
「うん、これは調査だからね。朝と夕方に。海が荒れている日以外は潜るよ。」
店長がカウンター越しにその人に話しかけていた。
どうやら、ダイバーらしかったが、「調査」というのが、何なのかよくわからない。
8時を過ぎて、あたしの仕事時間が終わると、店長はその人をあたしに紹介してくれた。
「こちら、紺野先生。ダイビングショップのお客さんだ。東京の大学の先生で、半年ほどこっちに住んで、毎日、沖のサンゴの調査をするらしい。その間のダイビングの機材は、うちの店を利用してくれるから、望海ちゃんもよろしく頼むよ。」
紺野さんのことをあたしに話しながら、店長はニコニコ顔だ。
確かに、半年間も続けてうちのショップを利用してくれるとなれば、えらく太いお得意様に違いない。
そりゃ、店長の顔も緩もうというものだ。
「紺野彰人です。よろしく。」
「あっ、有坂望海です。」
紺野さんが手を差し出してきて、あたしは手を握る。
紺野さんの掌の感触や、雰囲気は、この街の人のものとは何か違う感じがして、あたしはこの人に少しだけ、街の外の匂いを感じた。
その人は薄手のジャケットをはおり、カウンターに一人で座って、至極真っ当な食事をしていた。
夜も出せるけれど、わざわざ夜に頼む人もいない定食のメニューにビールを足して、美味しそうに食べている。
「……で、先生はこれから毎日、潜るのかい?」
「うん、これは調査だからね。朝と夕方に。海が荒れている日以外は潜るよ。」
店長がカウンター越しにその人に話しかけていた。
どうやら、ダイバーらしかったが、「調査」というのが、何なのかよくわからない。
8時を過ぎて、あたしの仕事時間が終わると、店長はその人をあたしに紹介してくれた。
「こちら、紺野先生。ダイビングショップのお客さんだ。東京の大学の先生で、半年ほどこっちに住んで、毎日、沖のサンゴの調査をするらしい。その間のダイビングの機材は、うちの店を利用してくれるから、望海ちゃんもよろしく頼むよ。」
紺野さんのことをあたしに話しながら、店長はニコニコ顔だ。
確かに、半年間も続けてうちのショップを利用してくれるとなれば、えらく太いお得意様に違いない。
そりゃ、店長の顔も緩もうというものだ。
「紺野彰人です。よろしく。」
「あっ、有坂望海です。」
紺野さんが手を差し出してきて、あたしは手を握る。
紺野さんの掌の感触や、雰囲気は、この街の人のものとは何か違う感じがして、あたしはこの人に少しだけ、街の外の匂いを感じた。