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第8章 先生の異常な愛情①　船の男たち　‐遥の告白‐

　それは、7月半ばの連休を控えた金曜日だった。
　わたしは、水泳部の練習を終えて、いつものように先生の家に夕食づくりに行っていた。
　いつもと同じように夕食を済ませたあと、先生はコーヒーを飲みながら、流しで食器を洗うわたしに向かって言った。
「実は……遥を抱かせたい人がいるんだ。」
　先生の言葉に、わたしの食器を洗う手が止まる。

　とうとう来てしまった、という感じだった。
　わたしは、あの宅配便の男の一件以来、先生の寝取られという性癖が少しだけわかったような気がしていた。
　それはもう、ある種の業のようなものだと思う。
　あの日、先生は初めて、心からわたしを求めてくれた。
　一人の男として、獣のような激しい情欲を隠そうともせず、ひたすらにわたしという女を貪ってくれた。
　わたしはあの日、本当の意味で先生と繋がれた気がしたのだ。

　わたしを他人に抱かせ、嫉妬の炎に身を焼くのが先生の悦びなら、わたしは躊躇いなく、他人に抱かれるだろう。
　そして、また、嫉妬で牡と化した先生の猛々しい愛撫に身を委ねるだろう。

　少しだけ間をおいて、わたしは先生の申し出に答える。
「……いいですよ。」
　明らかに欲望の光を宿した先生の目を見据えたままで、わたしは、先生のお願いを受け入れた。

　翌日の朝、わたしは先生の車に乗って、わたしを抱く男のもとへ向かっていた。
　どういう男なのかは、教えられていない。
　わたしは肩の開いた白いワンピースを着ていて、それだけ見れば、露出は多いものの、夏らしい装いに見える。けれども、問題はショーツもブラも下着を一切着ていないということだ。
　もう、わたしとしては恥ずかしいどころではなく、助手席に座っていても、ワンピースに乳首やアンダーが透けていないか、気になってしかたない。
　この女の子は見知らぬ人に抱かれたがっている変態なのだ、という態で、先生はわたしをその男に紹介するらしかった。下着を着せないのも、そういう演出だ、と先生は言った。
　わたしは、会ったこともない男の前で、そういう女として、ふるまわねばならない。
　
　そして、わたしはその男に、丸一日、明日の朝まで抱かれる予定だった。