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海猫たちの小夜曲
第2章 絶望の始まり ~海色のグラスと小麦色の少女①~
5月5日という日をどう過ごすべきなのか、あたし、有坂望海はよく知らない。
あたしは一人っ子なうえ、両親は小学校にあがる前に亡くなっていて、鯉のぼりはおろか、雛人形の記憶さえろくにない。
そして、今のあたしは叔父夫婦の家に引き取られて、ささやかに暮らしている身だ。
そういうあたしにとって、5月5日という日は、単にGWの最後の日、という認識でしかない。
けれど、あたしの16回目の5月5日は多分、絶望の始まりを告げる日だった。
その日の夜、あたしは自分の部屋で、男に犯されていたのだ。
目を血走らせた男は、あたしの両手を押さえてTシャツをはだけ、風呂上がりで上気したあたしの乳房にむしゃぶりついていた。
あたしは身をよじって抵抗を続けていたが、それもそう長くは保ちそうになかった。
醜悪な笑みを浮かべ、激しく乳房を吸い上げている目の前の男は、一つ年上の従兄の秀隆だった。秀隆はあたしの力が弱ってきたのを確認すると、手汗でべとつく右手を、容赦なくあたしのショーツの中に差し入れてきた。
「嫌あっ!……やめてえ!」
あたしはさっきから何度も声を上げていたが、階下にいるはずの叔母は一向に助けに来なかった。叔父は出張で留守だったが、叔母は風呂上りに居間の前を通りかかったとき、TVでお気に入りのドラマを見ていたから、居ないはずがなかった。