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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~


 あたしと叔父が家に戻ってきたのは夜の10時を回ったところだった。
 叔父は残業で遅くなって帰るところを、途中でバイト帰りのあたしを拾ってきたのだ、と叔母の前で嘘をついた。
 今まで、一度たりとも、そんな気の利いたことなんかしてくれたことがないくせに、と思ったが、あたしは叔父に念を押されて、仕方なく頷いた。

 叔父は一緒に晩御飯にしようと言ったが、あたしはもう叔父と一緒にいたくなかったし、何も食べたくなかった。あたしは晩御飯を断ると、濡れそぼったままの体操服をこっそりと洗濯機の中に放り込み、そのまま自分の部屋に上がった。


 あたしは部屋の隅にバッグを放り出すと、そのままベッドに倒れ込む。
 叔父にイカされ続けて、疲れきった体が鉛のようだった。
 叔父に抱かれるのは吐き気がするほど嫌だったが、体に触れられて刺激を与えられれば、あたしは気持ちよくなって、浅ましく声をあげて何度もイカされてしまう。
 あたしの心は、明確に叔父を拒絶しているのに、あたしの体は、すでに叔父を受け入れてしまっているのだろうか。
 そう考えると、まるで叔父の舌や手があたしの体を這いずり回って、あたしを侵食してくるようだった。

 もう、何も考えたくない。
 このままずっと眠り続けて、目が覚めなければいいのに。


 枕から顔をあげたあたしの視線の先には、先生がくれた海色のグラスがあった。
 ああ、明日は、このグラスのような碧い海の中で、先生と一緒にいることができる。
 今は、それだけが、あたしがありのままの自分でいられる時間なのだ。
 
 そして、あたしは海色のグラスを眺めながら、ずっと先生のことを想い続けていた。

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