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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~
「ふうー、結構、出たな。」
 秀隆はあたしの膣内からペニスを引き抜くと、コンドームを外して、精液の量を確認しながら息をついた。あたしとしては、その薄汚い精液の詰まったコンドームを持ってさっさと部屋を出て行って欲しい。

「おっと、お前みたいなクソ生意気な肉便器には、こっちも飲んでもらうからな。」
 秀隆はそう言うと、あたしにどっぷりと精液の詰まったコンドームを見せつけてきた。

 あたしはうんざりして顔を背けたが、次の瞬間、秀隆はあたしの前で信じられないことを始めた。
「へへ、直接だと飲みにくいだろうし、こいつに入れてやるか。」
 秀隆はベッドの棚に手を伸ばすと、先生がくれた海色のグラスを手に取って、コンドームの中の精液をグラスに垂らす。

「……なっ……何やってんの! ふざけんなよ!」
 あまりのことに、あたしは声をあげて、秀隆の手からグラスを奪い返そうとした。

 あたしの剣幕に驚いたのか、秀隆の手からグラスが滑り、フローリングの床に落ちる。
 ガチャンと無情な音がして、あたしの宝物だった海色のグラスが、床の上で、いくつかの破片に砕けた。
「ああっ!……嘘っ!……そんな……。」
 あたしは破片になってしまった哀れなグラスを前に、脱力して膝をついた。

「……やれやれ、そんなせこいグラス一つに、何をムキになってんだよ。まったく。」
 背中越しに聞こえた秀隆の言葉に、あたしの全身を激しい怒りが貫いた。
 他人に対して、殺したいほどの憎しみ、というものを感じたのは、恐らくこれが初めてだったろう。
 このクズは、あたしの体を犯して汚すだけならまだしも、先生のことも、先生があたしに示してくれた情までをも嘲笑し、汚そうとしたのだ。
 少なくとも、あたしにとって、たった今、秀隆がしたことはそういうことだった。

 ……絶対に許せない。許せるもんか。

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