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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~
 やがて、あたしの手足の感覚がぼやけはじめ、思考が鈍ってきた。
 
 ……いったい、あたしは何をやっているんだろう。
 今のあたしときたら、同じ海の中にいる大好きな人に想いを伝えることもできず、毎日のように秀隆や叔父に嬲り者にされているだけじゃないか。

 もう、好きな人を想うための海色のグラスさえ、あたしには無くなってしまった。
 そんな今のあたしに、一体、何の意味があるというのだろう。
 ……あたしはもう、生きていたくないのかもしれない。

 ああ、先生がいる。あたしと同じ海のなかに。
 今なら……今なら、あたしは先生の姿を見ながら、海の底に堕ちていくことができる。
 そうなれば、もう、誰かに犯されて、苦しむこともない。
 多分、それは今のあたしにとって、幸せなことだろう……。

 ……遥、せっかく友達になれたのに、こんなかっこ悪いあたしでごめんね……。


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