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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~
 そして、あたしの意識が落ちようとしたとき、あたしは誰かに強く抱きしめられた。
 ゆらゆらと漂いながら深淵に落ちていくような感覚から引き戻され、あたしは誰かに抱き留められたまま、ゆっくりと浮上していく。
 海面まで浮上したあたしの顔に風が当たり、あたしは自分が気を失いかけたところを先生に助けられたのだ、ということを悟った。

「遥! 手伝ってくれ! 有坂さんをボートに引っ張り上げるんだ!」
 先生が、あたしを抱き留めたまま、ボートの上の遥に声を張り上げる。

 そのまま、あたしは先生と遥の手でボートの上に引き上げられ、板の上に寝かされた。
「よかった、どうやら海水は飲んでないみたいだな。」
「望海! 望海! 大丈夫なの?」
 遥はあたしに声をかけつつ、体をさすってくれていたが、先生は、遥に、水筒から暖かいお茶を出すように言った。あたしは震えでまともに動かない口で、どうにかお茶を飲み込む。

「……あ……あの……あたし……」
「君は低体温症で気を失いかけてたんだ。もう大丈夫だから、このまま戻ろう。」
 朦朧としたままのあたしに、先生が教えてくれた。

「……すいません……あたし……ご迷惑をかけて……」
 あたしは一体、何をやっているんだ。
 睡眠不足で体調ボロボロのうえに、ウェットスーツの防寒を怠って低体温症なんて、バカとしか言いようがない。
 これじゃあ、体験ダイビングにやってくる女子大生以下じゃないか。
 こんな様でダイビングのインストラクターになるのが夢だなんて、よくも言えたものだ。
 あたしは自分の情けなさに、目に涙が滲んできた。

「そんなことは気にしなくていい。僕の方こそ、バディとして君の変調に気づかないといけなかったんだ。こんなことになってしまってすまない。」
 先生が優しい声であたしに言った。

 なんで、先生は、あたしなんかに優しい言葉をかけてくれるんだろう。
 あたしには、そんな言葉をかけてもらう価値なんかないのに。

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