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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~
「岸に戻ったら僕の車で医者に行こう。店長さんにも、僕から君の体調が悪くなったことを伝えておくよ。」

 先生は、ボートが岸につくまでの間にもテキパキと手を打ってくれていたが、あたしは、医者にはかかりたくなかった。医者にかかれば、保険証の使用履歴が残るから、あたしが医者に行ったことが叔父にばれてしまう。
 さらに、それがダイビング中の低体温症ということになれば、叔父は、もっけの幸いとばかりに、あたしにダイビングショップのバイトを辞めるよう言ってくるに違いない。
 それだけは絶対に避けなければならなかった。

「あの、医者には行きたくないんです!……もし、このことが叔父さんに知れたら、あたし、間違いなくバイトを辞めさせられるから……お願いです……医者には……。」
「……しかし、そうは言っても……。」
 あたしは必死に抵抗したが、先生はなかなか了解してくれない。

「……そんな無理に、医者に行かせることもないでしょ。どうせ、連れて行ったところで、この街の診療所じゃ、大した治療なんかできるわけないんだし。望海の気持ちをくんであげようよ、先生。」
 遥が助け舟を出してくれて、それで先生は、どうにか納得してくれた。
 岸についたあたしは先生の車に乗せてもらい、そのまま先生のログハウスに向かう。

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