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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~
 だけど、あたしがそう言ったあとで、飛んできたのは叔父の平手と怒声だった。
「利いたふうな口を叩くんじゃない! お前は何様のつもりだ!」
 なんでこんなやりたいだけの男に殴られなくてはならないのか、と思うと、悔しさで涙が出そうになってくる。
「いいか、1時間後には出かけるからな。それまでに支度しておけよ。」
 そう言い捨てて、叔父はあたしの部屋から出て行った。

 あたしは仕方なく、先生に電話で連絡を入れる。
「すいません、叔父に無理やり誘われて……多分、隣町のラブホテルに連れて行かれると思います。」
「……えらく早いな。だが、ちゃんと助けに行くから大丈夫だよ。前に話した通り、君は手筈通りに動くんだ、いいね。」
 先生はそう言って電話を切った。あたしとしてはもう、先生を信じるしかない。


 叔父は友達のところに行くついでにあたしをバイト先に送っていく、と叔母に嘘をつき、あたしを車に乗せた。
 そして、あたしは先生と打ち合わせた手筈通りに事を進めていた。
 バッグには、先生から渡された録音機が入っていて、車内での叔父の会話を録音中だ。

「今日は望海を俺の溜め込んだ子種できっちり孕ませてやるからな。覚悟しろよ。」
「妊娠検査薬で妊娠がわかったら、秀隆とも生でやるようにしろ。そうすれば、お腹の子はお前と秀隆の子として、うちで育ててやる。」

 あたしには、ただただ、おぞましいとしか言いようがない言葉を並べ立てながら、叔父は上機嫌で車を走らせている。向かう先は案の定、隣町のラブホテルのようで、あたしは心の中でひたすら先生の助けが来ることを願い続けた。

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