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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~
「すいません、県の児童相談所のものですが。」
 先生はそう名乗ると、部屋に踏み込んできた。
「誰だ! こんなところへ関係ない奴が入ってくるな!」
 叔父はベッドの上から先生を怒鳴りつけたが、その格好は、たるんで腹の出た裸に、腰にタオル一枚巻いただけという姿で、まるで威厳がない。
「……そういうわけにはいかないんですよ。実は、少し前に、望海さんの友人から、望海さんが引き取り先の家で性的虐待を受けているという相談を受けていましてね。今朝も、望海さんからメールを受けたということで、わたしに相談してきたんですよ。高瀬さん、彼女が有坂望海さんということで間違いないですね?」
「はい、間違いありません。」
 児童相談所の職員のふりをした先生の問いに、よどみなく遥が答える。

「性的虐待、ということですが、これも今の状況からして、間違いなく事実のようですね。」
 先生は冷厳な声で叔父に宣告した。
「なっ……いや、その、これは違うんだ! その、わたしは、そう、望海に誘われたんだ! こいつはどうしようもない淫乱で、たまに男に抱かれないとイライラするって言うから、それで、仕方なく、わたしが……」
 叔父がしどろもどろになりながら、とんでもないことを言ってきたので、思わずあたしはいい加減にしてくれと言いそうになった。
 だけど、あたしよりも早く、遥が口を開く。

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